腰の位置が分からない

能をはじめ、相撲や武術、茶道や華道など、日本の文化というものを稽古するには、腰が大事だということは多くの人が知っていると思います。ただ、仕舞や謡を教えさせていただいたり、ワークショップを開くようになって、どうも腰の位置が分からないという方が多いということに気付きました。
特に女性の方には、腰を何となくウエストの辺りと思っている人が多く、この一点と言える人はあまりいません。姿勢がいいと自負している人も、自分で腰と意識している位置が高く、胸を反っている場合が多いように思います。
これまでそういう方たちに対応しながら見つけた、自分の腰の位置を感じる方法をいくつか紹介したいと思います。

1.正座、あるいは椅子に浅く腰掛け、重心を前にかけます。両手を組み合わせて後頭部に当て、頭は後ろへ、組んだ手は前へグーッと押し合います。頭と手の「押しくらまんじゅう」です。そうすると、骨盤から背骨に繋がる仙骨といわれる一点に力が集中した感じが分かります。その時感じた一点が「腰」、人間の体の要なのです。

2.四つん這い、いわゆるハイハイの体勢をとります。このとき、手は肩の下に膝は骨盤の下に来るように注意。そして4本の手足に全体重を乗せます。それだけでも腰が沈む感じが分かるのですが、そのまま頭をグッと持ち上げて正面を見ようとすると、より腰を感じることができます。四つ足の動物になったイメージです。ためしに動くときに手足から動かず、腰から動くとスムーズに俊敏に動けるのを感じられると思います。

ハイハイ
ハイハイ

動きの速い動物ほど胴の部分がギュッと腰が入っている感じがしますが、常に腰から動いている証だと思います。前に家で飼っていたミニチュアダックスフントが私がこの動きを試して急に動いたところ、飼い主の私に対して「ウーッ」と唸り出しました。本能で襲われる危険を感じたのかとおかしくなりました。

3.仰向けに寝て力を抜きお腹に手を当てて腹式呼吸をし、息が入ったところでお腹で息を止めます。そのまま声を出さずに息で数を数えます。どのくらい続けられるかやってみてください。だんだんお腹が固くなってくると思います。苦しくなってきたらお腹がへこまないようにもうひと頑張り。そうすると腰が床から浮くのを感じられると思います。前にアップしている「仰向けでイロハ」を参照してください。イロハを覚えてない方は腰の位置を知るだけならこれでも大丈夫だと思います。

その方の体によってわかりやすい方法が違うと思いますのでいろいろ試してみてください。1と2については「声の道場~日本の声が危ない~」「声の道場Ⅱ~ハイハイ・ハイのすすめ~」にも詳しく書いているので、本をお持ちの方は読み直してくださると嬉しいです。

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