小学生の謡体験

先日、地方の小学校で能を体験してもらう催しに参加させていただきました。
短い狂言と能の一部分を鑑賞してもらうのですが、その解説と囃子のデモンストレーションの進行、子どもたちの謡の体験を受け持たせていただきました。
一年生から六年生まで合わせて100人弱。これまで私が経験したのは小学校高学年以上でのお話でした。能の歴史など、日本史を少し習っていると説明しやすいのですが、低学年の子には難しい…。
全体の生徒に興味を持ってもらえるべく、いろいろ考えました。
時間も限られているのですが、配分はある程度任されていたので、勉強のように感じられる話は極力減らし、絶対に面白がってくれそうな囃子のデモンストレーションと謡の体験に重きを置きました。
まずは囃子です。私が最初に能に興味を持ったのが囃子の魅力でしたから子供を引き付けることは間違いありません。
四人の囃子方にいつも通り、向かって左から太鼓、大鼓、小鼓、笛と並んでいただきました。そして
「お雛様の五人囃子知ってるでしょう?あれは能の囃子なんですよ。でも四人しかいませんね。あと一人は?」
と考えさせ、私が扇を持って笛の隣に座りました。
「もう一つの楽器は人間の体なんですよ。4つの音に声が加わって五人」
そして一つずつ楽器の説明と何種類かの音出しをしていただきました。その後、その日の能にある舞の部分を、それぞれ一人ずつ演奏してもらい、最後に4人一緒に囃してもらいました。子どもたちの意識が集中したのを感じたところで質問。
「オーケストラのように指揮者もいないし、横並びでアイコンタクトも取れない状態で、どうやって合わせていると思う?」
「掛け声、びっくりしたでしょう?あの掛け声がお互いのことをわかりあうのにとても大事なんです」
「これから観る能の中で観て聞いて楽しんでね」

そして謡体験。コロナ禍で「あまり大きな声を出さないように」という制約があったのですが、これを利用しようと思いました。
まず五人囃子のときに話した体が楽器ということを感じてもらおうと
「口を閉じたまま大きい声を出しましょう!できるかな?」
子どもたちは目を白黒させどうしたらいいか戸惑っています。
「みんなは、目上の人にお返事するときはハイッと言うと思うけど、お友達に返事するときはなんて言うかな?」
「ウン、っていうでしょ。その時口開ける?開けないよね。それを大きな声で言ってみよう!」
「ウンッ、ウンッ、ウーンッ」
姿勢を良くするように注意し何度も続けていると、だんだん大きい声が出るようになり、その状態で音を引き上げたり戻したりもして簡単な謡の上げ下げの音もハミングでやってみました。
「体が響いたのを感じた人」
と聞くと、三分の一程度の子が手を上げました。
その後は、謡の文章は小学生がわかるようなものではありませんから解説せず、オウム返しで二句ほどを覚えてもらい、あまり口を開けずにスラスラ言う練習をしました。そしてハミングした音に言葉を乗せ、これもオウム返しで真似をしてもらいました。
子供は普通だったら大きい声を出そうと言うと、大きな口を開けて叫ぶものですが、今回は当然あまり大きな声にはなりませんが、曲がりなりにも体に響く言葉が聞きとりやすい声になったように思います。子供たちがどう感じたかはわかりませんが…。
声の道場で提唱した「ハイッ、ハイッ、ハイッ」のあとは「ウンッ、ウンッ、ウンッ」というわけです。
どうにか決められた時間に収めることはできましたが、今度また機会と時間があったら腹話術ごっこもいれてみたいな、と思った私でした。
最後の能も、短いとはいえ興味を持って観てくれたような気がします。

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