10月27日、深大寺で観月会が催され、初めて能以外の分野の方たちと舞台をご一緒させていただきました。
力強い薩摩琵琶と語り、柔らかで雅な楽琵琶と龍笛、能管と謡、それに打物(創作された打楽器で沁み入るような音色です)で、平家物語の中から平経正が都落ちする時の話を、新しい形で語り演奏をする、という舞台です。私はナレーション(?)と謡の部分を受け持ちました。
この観月会は25回も続いている催しなのですが、私は初めてお声掛けいただき、最初は何をすればいいのだろう、と少し不安もありました。
出演者の顔合わせがあり稽古が始まると、薩摩琵琶と能管のアシライを受けて謡ったり、謡いの中に楽琵琶が響いたり、初めはどうなることかと思いましたが、稽古をする内にだんだん馴染んできました。
違う世界にいらっしゃる方とのお話も面白く、とても楽しい経験でした。
楽琵琶と龍笛には美しさの中に儚さを、薩摩琵琶と能管の競演には力強さの中に悲しさを感じました。
謡や薩摩琵琶の語りの中にアシライが入ります。謡に能管のアシライは能のときもありますから気になりませんでしたが、楽琵琶のアシライが入るとなんとなく違和感があり、これが戦う武士と雅な公達との好みの違いなのかな、などと最初は戸惑いました。楽琵琶の奏者の方も苦労されていたと思います。
ただ、本番でそれぞれが吹っ切れて違いを気にせず、思い切ってぶつかったことで、不思議な魅力が出たような気がしました。
経正という平家の栄華の中で戦を知らずに育った公達の、戦に呑み込まれていく悲しさが、その違和感の中に感じられたというか…。私はただ精一杯謡うだけだったのですが、不思議な感覚でした。
もしかしたら台本と演出にそういう意図もあったのでしょうか…。
催しが始まった頃には雨がぱらついていたのですが、終わって帰途につく頃には美しい十三夜の月も観ることができ、とても印象深い日になりました。