毎年12月の第一土曜日に中学校の同窓会があります。久留米市の中学校ですが、1992年以来、コロナ禍で休みになった1回はあるものの31年も続いています。私は同窓会が始まった頃は、能楽師として活動し始めたばかりでもあり、子供もまだ小学生中学生だったので欠席が多かったのですが、途中からはほぼ毎回出席しています。
幹事の方のしっかりしたお世話があり、東京に在住の方も多く、上京して参加される方もあるので多い時は20人を越す集まりでした。さすがにコロナ後すぐの回は10人に満たなかったのですが、今年は久しぶりに17人という大人数でした。
皆さんそれぞれ、現役でご活躍の方、これからの生活を楽しんでいる方、楽しもうとしていらっしゃる方、いろいろなお話を伺うのが楽しいのですが、やはり年齢とともに健康の話が多くなってきました。
私はコロナ以前から、能のこと、発声のこと、姿勢のことをよく話していたので、皆さん体のことで何かあると思い出してくださってるらしく、今回はいろんな質問を受けました。私が話す順番になると、自分の近況報告もそこそこに、体に関する質問が飛んできて、「声の道場」や「能エクササイズ」のワークショップをしている感じになってしまいました。
ここ3〜4年お休みになっていた方の中には、手術をなさって現在リハビリ中の方、喘息になって声が出しづらくなったという方、体重が気になってなにか始めなくてはと思っている方、何か始めて体についていろいろ興味が出てきた方、質問のある方から、次から次へといろんなことを尋ねられました。
いろいろ説明している内に、流れで何気なく
「なかなか歩けない時は片足立ちは体にいいですよ」
とお話ししました。
すると会がお開きになって帰り間際、運動不足で体重を減らしたいと言っていた方から、
「片足立ちはふらふらして全然できないけど、どうやったらいいの?」
尋ねられました。そこで
「最初からすぐには無理なので、まずは転ばないようにどこかを手で支えて、両足で立ち、意識して片方に重心を移し、自分でそれを感じたら重心の乗ってない足の踵をゆっくり揚げ、安定してたら爪先も上げる。それを繰り返し片足上げている時間をだんだん増やし、手を放しても大丈夫、となって初めて片足立ち10秒、20秒と増やしてみたらいいと思う」
というようなことを、答えました。
それから二日ほど経って、その人のその後が気になり始めました。全体で話していたときに聞いていた方はそれ程お家でなさることはないと思ったのですが、帰り間際の質問は真剣だったな、と思ったのです。
男の人は、割合早くに結果が欲しくて、先へ先へ進もうとする方が多いので、もしかしたら早く片足立ちをしようとなさるかもしれない。転ばれるかもしれない……。来年その方が「転んで怪我をして欠席」ということになったら大変です。
気になり始めたら、頭から離れず、これまであまりやりとりはしていなかったのですが、名簿で電話番号を調べて掛けてみました。
案の定、もういろいろなさっていました。そこでもう一度急にやらずに段階を踏むことをお勧めしました。すると納得なさったうえで、またいくつか質問を為さり、それにお答えするという展開に…。
最終的にまた何かあったら質問してくださるようにアドレス交換をし、今回は終了しました。
これまで話した「姿勢に関する話」は何人かの方に役に立っていると言っていただけたので嬉しかったのですが、具体的な話は、軽く話したことによって、言葉が独り歩きすると危険なこともある、ということに気が付き、反省しました。
今回は後でケアできたのですが、ワークショップなどのように対面でお教えする時と違って、同窓会や友人の集まりなど、流れからの軽い気持ちでの話の時は気をつけなければ、と思わされた出来事でした。