ホームページから「声の道場」に申し込んでくださった40代の男性が、年末に体験にいらっしゃいました。
若い時から俳優をなさっていて、何も気にせず声を出していたけれど、ここに来て「発声はこれでいいのか」と、出す声に違和感を感じられるようになられたのだとか。
いつものように、姿勢の大切さと、息に文字を言放つ、体に声を響かすとはどういうことかを、説明しながら、母音や子音「いろは…」を使って実践をしました。
とても感覚のいい方で、すぐに「表に出る声」と「体に響く声」の違いを感じられたようでした。
最初の謡を体験していただくためのテキスト(謡の一部をコピーしたもの)をお渡しし、二行ほど体験していただいて1回目を終了しました。
とても興味を持ってくださり、1月2月も1回ずつですがいらっしゃることになりました。謡の稽古もなさりたいとのことでしたが、一応最初のテキストを体験なさってから先をなさるかどうか決めていただこうと思いました。
私が著した「声の道場」の本はまだお読みでないということだったので、できれば読んでいただくようにお願いし、その日は終了しました。
年が明けて2回目にいらして開口一番
「僕は今まで、まるで逆のことをしていました。外に向かって大きな声を出そう出そうとしていました。体に響かす感覚が少しわかりました。気持ちがいいですね」
「声の道場」の本も三冊すべて読んでくださっていました。
和の発声から謡の発声へと「引く息」を体感していただきながら、テキストの半分くらいまで進みました。普通はなかなかこうは行きません。
話す声や演劇のセリフ、語りなどのためにいらっしゃる方は、謡の発声まで行かなくても姿勢や呼吸が変わると効果が出てきますから、それほど謡を謡えるようになりたいとは思われないせいもあるかもしれませんが、テキスト半分終わるのに、早くても5. 6回はかかるのです。この方は謡に対する興味が相当あるな、と思いました。私の話に、ひとつひとつ納得し面白がってくださるのです。
「お腹がこんなに苦しいんですね〜」
息を詰めることによってお腹が使われる感覚も少しですが感じられたようです。
そして2月の3回目の稽古で、テキストを終えてしまわれました。
「謡の稽古に入られますか?でしたら一冊目の教本を用意しますが」
というと、すぐに
「お願いします!」
「体に声を響かす感じがわかってきてとても面白いです」
と。
これまで、謡の経験がなくて声の悩みで「声の道場」にいらした方で、3回目で謡の稽古に入られるという方は初めてのような気がします。娘と同じくらいの年のようです。これからどこまでお教えできるかわかりませんが、とても楽しみです。
力のある謡を謡われるようになり、それが俳優というお仕事にも良い影響として現れるよう、丁寧なお稽古をしていきたいと思っています。