「桜」の一字

今月29日(月)は杉並能楽堂で緑桜会の稽古会を催します。お稽古にも熱の入る時期になってきました。

今年は桜の開花が遅いといいますが、私の小さい頃は早くても遅くても桜は三月末の卒業式の頃から咲きはじめ、四月初旬の入学式の頃に満開でした。
私の誕生日はいつも入学式前後になります。ですから桜が咲いてないことはありませんでした。毎年旧暦でのお雛祭をかねてお友達を招いて誕生会。桜満開の中の土筆摘みはとても楽しかったのを覚えています。

能楽師として初めて自分の会を持つことになり、師匠から会名をいただくときのこと。

梅若に所属する能楽師は、発会のときに当主名の六郎の六を緑として、その「緑」の一字をいただきます。それに自分の名前だったり、自分に関する一字を付けて会名とさせていただくのです。
私の場合は、姓でも名前でも堅いイメージになるので他の字を考えました。その時「桜」の一字が先ず浮かんだのです。自分の生まれたときに満開だった桜、もちろん自分で覚えているわけではありませんが、親兄弟から私の生まれた時の話を聞くと、必ず「桜」の話になっていました。難しい「櫻」という字もありますが、「桜」の方が優しい感じがして好きでした。その事を師匠にお話すると
「いいじゃない!」
と、すぐにお許しをいただき「緑桜会」という会名が決まったのです。

そういう理由もあって、会を開催するのは4月が多くなり、「吉野天人」という桜の曲は、会員が皆「うちの会の曲」といって、よく謡ったり舞ったりします。そのときは本当に明るい気持ちになります。

久しぶりに私の誕生日は満開の桜になりそうです。ちょうど稽古日なので、いらしている方たちで、囃子を入れて「吉野天人」を謡ってみようかなと思っています。


稽古会に向けて、あと4週間ほど。このところコロナで会ができないことがあったり、その前何年かの会も稽古の追い込みは桜が散った後だったりでしたが、今年は桜の応援で皆さんとより楽しくお稽古できそうな気がします。

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