「繋の会」発足

昨年、緑桜会会員から初めて師範を申請して、お許しをいただいたとき、
「あなたも跡を受け継ぐ人ができたのだから、僕の教えたことをしっかり伝えてね」
と師匠(梅若桜雪師)からお言葉をいただきました。
これまでもなるべく、自分がお習いしたことをなるべく正しく伝えたいとお弟子さんたちの稽古をしてきたつもりでした。けれども改めて考えました。

もともと師匠から私、私から弟子へ、ほんの一部ではあってもできるだけ先へ繋ぐことが大事、と考えていました。
私は師匠に教えて頂く前は、福岡で鷹尾祥史先生にお習いしていて、初歩の頃からたくさんの事を教えていただきました。また、先輩としての両親からもいろいろと稽古の心得など注意を受けていました。それを繋ぐのも大事なことだと考えています。
両親からの繋がり。それは親から子へ、子から孫へ。私が血で繋ぐことは親やその前から受け継がれてきた精神です。
そして芸の上の繋がりは、一部分ではあっても二人の師匠からの伝承。それを私の後の人に繋げていくことが大事なのだということを、師匠が言葉にしてくださったのだと感じました。

「人、人にあらず。知るをもって人とす」
「家、家にあらず。継ぐを持って家とす」
世阿弥の言葉です。
それに加え自分で考えた言葉ですが
「芸、芸にあらず。繋ぐをもって芸とす」
を自分に言い聞かせたいと思います。
私が芸を繋ぐというのはおこがましい。ただ芸とまでは言えない拙いものであっても、せめて自分の体で受け止められたものだけでも先へ繋ぎたい。私がお教え頂いた先生方からそのご子息や師弟に間違いなく受け継がれていると思う能楽師の芸も、もっとたくさんの方に観ていただき能を観る楽しさを先へ繋ぎたい。私がお稽古させていただいている方たちにも、能を観たり稽古をする楽しさをまた先に繋げてほしい。そんな思いを込めて、今年11月に立ち上げる会を「繋の会」と名付けました。

まだ詳細は決まっていませんが、次代の人たちと相談しながら、気持ちのこもった会にしていきたいと思っています。

会としても一昨年企画した最後の「こころみの会」から繋いで「能へ繋がる舞囃子の会」「自分が観たくなるような会」を目指したいと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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