ヨガなどで「○○のポーズ」などといって、自分の体を何かにイメージしていろんなポーズを取ることで、体を整えることがあります。私も一度だけ体験させていただいたのですが、横たわったり座ったりしてのポーズは思ったよりできました。ところが立ち上がって「木のポーズ」ということで、先生の言われるように片足立ちをし、両手を上で合わせた時にフラフラしてなかなか安定できなかったのです。ビックリしました。というのは、私は毎日自分で片足立ちのトレーニングをしていたからです。
「どうしてだろう?」家に帰りもう一度挑戦しました。今度は自分のいつもの体勢で片足立ちをしてから同じように両手を上で合わせたら、フラフラしないで安定して立っていられるのです。
「そうか、私は能の軸で片足立ちをするのはできるけど、ヨガの軸ではできないのだ」
ということに気が付きました。
自分の体を木にイメージしての動作です。ヨガでの「木のポーズ」はどんな軸でしょう。上に向かってスーッと伸びるしなやかな軸のような気がします。
能の構えで自分の体を木にイメージしてみました。しっかり根を張った太い幹が上に伸びるとともに、枝も幹から力強く広がるような、そんな木を想像してしまいます。能の軸の重心はヨガより低いのです。
ヨガで自分の軸を無くした私が片足立ちができなかったのは当たり前でした。
「能エクササイズ」では下半身の筋力を付けると同時に、膝から腰の軸を感じるために、膝にクッション(バスタオルでも)を挟んでのスクワットをお教えしているのですが、この頃は能の軸での「木のイメージ」を取り入れています。
膝下を根っこと考え、クッション(バスタオル)を膝に挟んで少し沈み、膝を締め体を持ち上げ骨盤も締めます(膝に挟む厚みは膝で挟んで両足が平行になるくらいに)。その状態だと膝は伸びきらず腰の位置も安定するので、それから上に木が伸びていくイメージを持ち、少しずつ体の中で上に向かって気を籠めていく。自分の体が、浮き袋が膨らむときのように、内に向けた息でだんだん形になっていく感じ、というか…。言葉で表すのはなかなか難しいところです。
背骨に気が通った感じがしたら、同じように肩甲骨を横に張りグーっと幹から枝が伸びる感じで腕に、そして手先指先まで、腰とつながる感じで伸ばしていきます。息を「ウ~ン」と体の中で出し切り、呼気が入る時に体を緩め腰を沈めます。それを一回として、太い木が伸びていくイメージを何度か繰り返します。目線は真っ直ぐ遠くを見て体の動きに添うように。
膝が悪い方などスクワットが難しい場合は、沈まずに骨盤を締めるところから始めて同じようにすれば、上半身の動きはイメージしながら稽古できます。
伸び切ったときの軸は、「腰から下は地に、腰から上は天に」向かっている感じです。私は最後に腰から繋がった感じで肩甲骨をしっかり広げ、胸板を作ってから腕を横や前に上げたり、あるいは腕を返したりして、仕舞の型で使う動きをするようにしています。それが終わったら、根っこをほぐすための膝回しのストレッチを組み合わせて終了です。
ただただトレーニングやストレッチをすると、なんとなく流してしまうことがあったのですが、「この部位を伸ばそう」とか「ここを鍛えよう」とかを意識するのと同時に、体を何かにイメージすると結構楽しめるなと思っています。
木をイメージする運動をするようになって、接骨院の先生から
「前は時々背中が丸くなりかけてる時があったけど、この頃しっかり伸びてますね」
と言われました。
「肩甲骨を横に張ってから腕に繋げるのがいいのかな?」
と思っています。
私はよく「健康オタク」と言われます。初めは能を舞うためにやらなければと始めたトレーニングやストレッチでしたが、今ではいろいろ面白がってやっているので、まさしく「健康オタク」かもしれません。