素謡稽古会

緑桜会では10年ほど前から毎年8月の半ばに素謡だけの稽古会をしています。
普通の会のときは、仕舞を舞う方も多く、出演の方が多いと時間が足りないのもあって、なかなか素謡を一番しっかり謡うことができません。どうしても役の謡を中心に稽古することになり、役は謡えても地謡をひとりでは謡えないということになってしまいます。
やはり能の脚本として謡本を考えるなら、一曲をその役になりきり、または普段謡うことが少ない地謡をきっちり地謡方として謡う稽古をすることが皆さんの力をつけることになるのでは、と思って素謡稽古会を始めました。
五番ほど曲を選び参加希望の方の中で役を決め、8月の半ばに素謡稽古会をするのが毎年恒例となっていたのです。コロナの蔓延で2年お休みをしていましたが、今年はできそうだと思い立ち、6月頃からそれに向けての稽古を始めていました。
ところが7月に入り、またまた大きなコロナの波が…。今まで以上に周りでの感染者も増え、狭い稽古場での20人もの集まりは難しく、やむなく中止といたしました。
それでもこれまでお稽古してきた方たちにどうにかして謡わせてあげることはできないものかと考え、お稽古場ごとにお稽古日に時間を作り、その時に集まれる人だけで一曲ずつ謡うことにしました。
間を空け5人ほどが同じ方に向いて並び、マスクを着けたまま、お客様無しで謡いました。
それぞれが役を精一杯謡い、地謡も抜くところなく皆で謡いました。謡い終わって少しのお直しはしたものの、思ったよりずっと上手く行き、謡いきった皆さんの顔は晴々としていました。普段のお稽古のとき以上の力も出ました。自分が謡うことだけでなく相手とその場面を創る、という意識が間違いなく働いたようです。これからのお稽古がますます楽しくなるのではないかと思います。私も楽しみです。
会の形をした稽古、このやり方なら大きな会ができなくても、どんなときもできそうです。今回予定していた他の曲も稽古場やグループでまた思い立ってみようと考えています。

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