芸術は長く 人生は短し

坂本龍一さんが亡くなられました。いろんな分野で世界的にも多大な足跡を残され、最後まで病と向き合いつつも音楽プロデュースを全うされました。
坂本さんが好まれた言葉に
「芸術は長く 人生は短し」
があると伺いました。
音楽でも美術でも文学でも、それを作った人が亡くなった後も作品は愛され、いつまでも後の世の人たちを癒やし救ってくれます。

坂本龍一さんの言葉を聞いた時、
「命には終わりあり 能に果てあるべからず」
を思い出しました。これは世阿弥の言葉ですが、
「命の果てるまで能に向き合い続けなさい。自分がいなくなっても能そのものは変わらない。後に続く人たちにその思いがあれば能に終わりはない」
ということを伝えたかったのだと思います。

どちらの言葉も、一生を音楽や能に全てを打ち込んだ人が語った言葉だからこそ重いのだと思います。
ただ単に
「芸術は素晴らしい」
という礼賛ではない。
「芸術には終わりがないけれど、それは芸術に真摯に向き合う人間が繋がり続けていてこそ」
という意味だと思うのです。

ある名人と言われる歌舞伎役者が
「歌舞伎が素晴らしいのではなく、素晴らしいから歌舞伎なのだ」
と言ったのを聞いたことがあります。歌舞伎を能に置き換えても、他の芸術に置き換えても成り立つと思います。

自分のいる世界を顧みて
「素晴らしいから能。そういう能が果てないようにひとりひとりの能役者が修業を真摯に続けなければならない」
ということだと思いました。それと同時に
「もし素晴らしい能を演じることができる人間がいなくなったら、能はどうなるのだろう」
と考えてしまいました。
形は間違いなく残るとは思うのですが、はたしてそれは「能に果てあるべからず」といえるのか…。
杞憂に終わることを願っています。

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