体技心

以前、たまたまテレビを見ていたら「日曜日の初耳学」という番組で2022ロン=ティボウ国際音楽コンクールのピアノ部門で優勝した新進気鋭の亀井聖矢さん(21歳)の演奏があり、惹き込まれて聴きいりました。
美しいというだけでなく、とても魅力的なワクワクするような、訴えかけてくるような音楽でした。その後の話もまた興味深いものでした。

鍵盤のタッチの話をしたら何時間でも話せると楽しそうに語られていました。
指の硬いところで叩く、指の柔らかいところでなでるようにひく、腕から、肩から、肩甲骨からひくことによって、それぞれ音質が違ってくる、と実演をしながら……。

練習を重ね、体が鍛えられ(ピアノの場合は指先まで)技術が身に付き、それを駆使して初めて表現ができる。
表現することが楽しい、聴いている人に音で情景が浮かび上がるような演奏をしたい……。すごく気持ちが伝わりましたし、とてもよくわかりました。

武道でも芸道でも道と言われる修業形態では、昔から心技体が大事と言われますが、私はそれをいうなら順番的にも体技心ではないか、と思っていました。
心は大事、しかしそれを表現できるのは練習、稽古を重ねて身に付けた体と技術があってこそだと思うのです。

能の仕舞や謡も同じ。文字という頭を使う表現はあっても、体という楽器を創り、稽古によりその技術を身につけ、音質の表現ができるようになって初めてその情景や心情が表現できるようになるのだと思います。
そうなった時にいちばん大事なのは心です。その心は稽古だけでなく常日頃から培われて創られていくもの、何をする人ということではなく、全ての人間にとって最も大事なものなのです。

1時間番組の15分位でしたが、心が洗われるような時間になりました。

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