日本人の体

去年のサッカーに続き、今年は、野球、バレー、バスケットと、スポーツの世界大会で国を上げて盛り上がることが続いています。
また八月末からラグビーの世界大会がフランスで始まりました。他の競技よりルールが難しいと思う人が多いそうで、テレビのワイドショーでラグビーのルールを解説していました。
私もラグビーというと走る、蹴る、トライする以外に、ガッチリ大勢でスクラムを組んで押し合う姿が印象的で、球技では一番体力体幹の強さが求められる競技なんだろうとは思っていましたが、ルールはよくわかっていませんでした。
解説をしていた元ラグビー日本代表選手だった方の話がとても興味深く、聞き入りました。

軽い反則などでゲームが途切れたときは、スクラムを組み、その中にボールを投げ入れるところから始まります。そのボールをどのようにどのタイミングで出すか、しっかり押し合いをリードできるのが重要。その出し方とパスのタイミングがトライに繋がる。トライばかりが注目されるが、スクラムに押し勝つのがとても重要なのだとか。
解説した方は昔フランス人コーチからこう言われたそうです。
「もっともっと重心を低く。日本人は正座ができるでしょう。足首が柔らかいんだから低い姿勢ができるはず。下から起こせるからそれはプラス」
と…。解説の方は相撲と同じなのだとも言われました。

このところ正座のできない日本人が増えているといいます。椅子の生活が増え、小さい頃から正座をする機会もなくなりました。正座はしないほうがいいという風潮も関係していると思います。そのために足首が硬い方も増えている。私は以前からそれを憂いていました。
日本人にとっての正座は上半身をしっかり保つことを促し、柔らかい足首は重心を前に掛けやすく、下半身を安定させ、何をするにも体全体の動きに力を与えるのです。
外国の方が正座をプラスに捉えてくださっているのを聞いて、すごく嬉しくなりました。

そういえば昔、サッカーの選手が下半身を鍛えるために相撲部屋へすり足の稽古をしに行った、ということを聞いたことがあります。海外のスポーツであっても、特に日本人にとっては、下半身の力をつけることが重要なのだと思います。
海外のスポーツにおいて国際的な大会で戦う時、日本人にとって体の大きさにはハンディがあります。特に上半身には体格差があるように感じます。
同じように真似していてもなかなか勝ち上がれません。日本人の体の特性、重心を低く足腰の強さを活かしてこそ、強豪国に一泡吹かせることができるのではないかと思います。


このところの世界大会での活躍に繋がっているのは、まさにそういうことではないかと思いました
サッカーのドリブルでの攻撃の速さ。バレーボールのコンビプレーや守備力。バスケットで身長が低くても小回りが利き、相手を掻い潜りフェイントを掛けて相手を惑わす動き、などなど日本人の体の特性を活かした練習あってのものではないでしょうか。
沖縄で開催されたバスケットの世界選手権大会予選。国民全体が盛り上がったのも、日本人ならではの活躍に心躍ったからではないでしょうか。強豪国同士の力がぶつかり合う試合も面白いのですが、日本の小さな司令塔が縦横無尽に動き回って大きな選手を翻弄するのは本当に見ごたえがありました。

日本古来の能のすり足の効果、これも日本人の体の安定に繋がります。年齢が上がり、激しい運動はなかなかできなくなってきます。歳を取ってからの転びにくい体を作るには仕舞の稽古や能エクササイズは、日本人にとってとても有効なのではないか、と改めて思いました。正座からの立ち居は、やはり足首の柔らかさが必要になります。
おとなになってから慣れない正座や足首を軟らかくするエクササイズは大変かもしれませんが、少しでも改善されれば和の動きをするときには力が増すのではないか、また、日常の動きも楽になるのではないかと思っています。

自分も含めてお稽古にみえる方に永く健康でいていただくために、これからも「声の道場」とともに「能エクササイズ」にもしっかり取り組みたいと思っています。

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