楠森堂の会が終わりました

11月28日(火)、最後の楠森堂の会が無事に終了いたしました。
前から天気予報を見て案じていた通り、風が強く、落ち葉が舞台一面に散りながらの公演になりましたが、時々座敷に差し込む木漏れ日とともに、それを風情と楽しんでくださった方もあったようです。
気温はそう低くなかったものの、庭で3時間以上の長い間観てくださった皆様は、風のために相当体感温度が低くなり寒かったと思うのですが、防寒対策を為さり、最後まで見守って下さいました。
いろんなハプニングはありましたが、出演の皆様も舞台を楽しんでくださったようで、お稽古のときよりも堂々と舞い謡われたと思います。
そしていつもながら温かい雰囲気の中に最後の会を終了させていただくことができました。

「松に吹き来る風も狂じて 須磨の高波激しき夜すがら…」
舞囃子の最後、私の「松風」の時が、謡の文章の通り、一番激しく風が吹いたように思います。
もしかしたら両親の思いもあったのかも……。その後皆様に御礼のご挨拶をしていて、そう思うと目頭が熱くなりました。
最後に鷹尾維教先生、章弘先生が心をこめて舞ってくださった追善の仕舞で、これまでの会も含めて楠森堂の会を締めていただきました。
両親も喜んでくれたに違いありません。

会が済んで表に出て、いらしてくださったお客様にご挨拶をしました。
中学校の同級生、親戚、久しぶりの方もあり、なかなかお顔が思い出せずに名前を伺った方も。
「お互いに髪が真っ白で普通にすれ違ってもわからなかったね」
などと旧交を温めました。
その中にお一人、
「長い間ありがとうございました」
と頭を下げてくださった方がありました。マスクを取って頂いてもわからず、申し訳なく思っていると

「一度しかお会いしてないんですからおわかりにならなくても当たり前ですよ」

と言ってくださいました。

お話を聞くと、10年ほど前に楠森から車で1時間くらいの「美奈宜の杜」 という所にお住まいの方から依頼をいただき「声の道場」をさせていただいたことがあり、その時に参加してくださった方でした。

それをきっかけに楠森堂の会の時に何回かいらしてくださったのだそうです。今回が最後ということを知って駆けつけてくださり、挨拶してくださったのでした。
ほんの何時間かの触れ合いをきっかけに、これまで思いを繋いでいてくださったことに驚き、

「長い間ありがとうございました」

は私が申し上げたい言葉でした。そして感謝の気持でいっぱいになりました。
どんなときでも誠意を持って対応しなければならない、「一期一会」という言葉を改めて考えさせられた会となりました。

楠森堂の最後の会にいらしてくださった方たちの中には、50年以上昔からお付き合いのある方、ふとしたきっかけで繋がりを大事にしてくださっていた方、そして今回初めて繋がりが始まった方もありました。
会の前後にも、これまで協力してくださった方々の温かい気持ちをたくさんいただきました。

人の繋がりを本当にたくさん感じた会でしたが、それを大切にしなければいけないよ、と両親が私にもう一度伝えたかったのかもしれません。

これまで支えてくださった先生方、緑桜会の皆様、毎回観に来てくださった皆様、いつも待受側で大変してくださった楠森堂の皆様に、そしてもちろん両親に……感謝、感謝、感謝の会でした。

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