手首の治療で、指先などの末端の不調も体の中心からを意識することでいい方へ向かう、という施術を受け、セルフケアを教えていただきました。
仕舞の稽古などで、手を上げるときも扇を使うときも
「腰から意識して!」
と教えている私にはとても納得の行くものでした。
その一例が「肋骨を意識する」ことでした。横になっても起きてもいいのですが、右(または左)手で左(または右)鎖骨の下の一番上にある肋骨付け根を触ります。そして肋骨を触っている側の腕を前から持ち上げ、肩をゆっくり後へ回します。その時肋骨が動いているのを感じられたらひとつ下の肋骨を触ります。また腕を回す。肋骨が動いたらまた下へ、感じられなければもう一度大きく回してみる。そうしながらすべての肋骨が動くのを確かめつつ腕を肩から回すのです。腕を上げるときに鼻から息を吸って下ろすときに吐くと、肺が大きく広がるのが感じられます。
ただ腕を回すと、「グルグルグル」という感じですが、肋骨を意識して回すと「グイングイン」という感じ、呼吸と連動した大きくゆったりした回し方になります。
その感覚は、私がお教えしている能エクササイズで首を回すときの、「首だけ回す」と「腰を意識して首を回す」の違いと似ています。首だけ意識して回すと体が揺れ、軌跡が定まらず、反動で回している感じになります。対して後ろで腕を組み腰を意識して繋がっている感じで回すと、大きく決まった軌跡でゆったり回せる感じがします。ただし、こちらは息を吐きながら(口を閉じ鼻から)したほうが呼吸と合います。能の動きのためのエクササイズとして考えたものだからかもしれません。
この肋骨を感じながら腕を回すストレッチは、間違いなく体が動くことなく、腰背骨から肋骨に繋がり大きな動きになり、「呼吸が深くなる」とともに「肺の動きが大きくゆったりなる」のだと思います。
肺がゆったり広がるこの動きは、もちろん声の響きにプラスになるし、何より健康のためにいいと思うので、能エクササイズでもまた皆さんに体験していただこうと思っています。