小冊子

能のひとひら

50代の頃、五行歌をよく作っていました。和歌や俳句も好きだったのですが、何の決まりも無く、ただ気持ちを五行に表せばいいという手軽さに惹かれ、思いついたことを五行にしていました。一つの文章をどこで区切るかによって、リズムや印象が変わるのが魅力でした。

日常のことも詠んだのですが、やはり能に関するものが多くて、それを整理することにしました。能を観たときの感動、能そのものへの思い、日々の稽古の中で感じたこと、などなのですが、整理しているうちに、何か形に残せたらと思うようになりました。

ちょうどその頃私は還暦の年を迎える前で、緑桜会の15周年も重なり、記念の会を催すことにしていました。
「そうだ、それに合わせて歌集を作ろう!会にいらしてくださった方にお配りして読んでいただこう!」
と思いつきました。

能について語る、などという大それたことはできません。わからないことばかりです。能を始めた頃から能の玄関口に立ち、一つわかったような気がして扉を開けると、玄関が広がっただけでまた扉がある。わかればわかるだけ玄関が広がり扉が増える感覚。それが私を能に夢中にさせるのだと、ようやくわかってきた頃でした。私の考えることなどほんの小さなことなのです。
「そうだ!能は花、私の思いはその小さな一部だから花びら・・・ひとひら、歌集の題は〈能のひとひら〉にしよう!」

そして表紙の題字を友人の書家、寺本一川さんにお願いし、小さな五行歌集ができあがりました。

ホームページに能への思いを書くようになって、当時詠んだ五行歌がまた頭に浮かぶようになってきました。能に関することを書いた文章に付けるタグを考えたとき、「能のひとひら」にしよう、となったのです。

この歌集「能のひとひら」と、今回ホームページを立ち上げるきっかけとなった小冊子「息の中にて文字を言い放つべし」がまだ手元に残っています。もし、読んでくださる方がありましたら差し上げたいと思いますので、ご希望の方はメニュー「声の道場」からのお知らせをご覧ください。

出逢って目覚め目覚めて出逢う人との繋がり
山村庸子 能の五行歌集「能のひとひら」より

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