抜き足、差し足、忍び足

-能エクササイズ実践 2-

和の構え」に続き、2回目は「すり足」の稽古に入る前に、片足にしっかり重心を乗せることを体感するための稽古からです。「片足立ちの効用」の回でも述べましたが、この稽古だけでも十分健康維持に役立つと思います。

和の構え」を踏まえて立ちます。しっかり右足に乗り重心が前にかかっているのを確かめてから、左足の踵をゆっくり上げます。右足に安定して体重が乗ったら爪先も少し持ち上げ5秒ほどキープします。またゆっくり爪先から下ろし、今度は左足に重心を移します。同じように前に重心がかかっているのを確かめてから、右足の踵からゆっくり上げて、爪先をあげたら5秒ほどキープ。これを交互に何度か繰り返します。

それができるようになったら、重心は移さずに上げた足を一足ほど前に出して爪先から静かに下ろします。また踵から引き上げ今度は一足後ろに静かに下ろします。この時も重心は移しません。最初の軸足に重心を乗せたまま、前後に上げ下げをするのです。右左両方で何回か稽古します。上半身を動かさずにできるようになったら次に進みます。

今度は片足を引き上げ軸足から一足分前に下ろしたら、体が上下動しないように重心を床と平行に前の足に移します。後ろに残した足を抜くように引き上げ、また前に静かに下ろし重心を移動。上半身を揺らさないように右足左足と交互に重心を乗せていく稽古を繰り返していくと、その歩き方が何かに似てきます。
「抜き足、差し足、忍び足」と声をかけながら重心の移動を感じていただくのです。後ろの足を引き上げるのはまさしく「抜き足」、その足を前に静かに爪先から下ろすのは「差し足」、これは音を立てず重さを感じさせない歩き方「忍び足」。音を立ててはいけないときに自然にしてしまう重心移動なのです。(泥棒?忍者?)

そして最後にいよいよ「すり足」。足を引き上げて前に出す時間を足裏で床を擦ることに使い、同じような重心の移し方で、右左右左と続けます。上半身が揺れずに重心がスムーズに移るようになった時には、自然に「すり足」になっています。

この一連の稽古で、体重を感じさせない軽い動きの「抜き足差し足忍び足」が、重心移動(腰の動き)の仕方は変えず、しっかり重さを床に残したまま水平に進む動き方「すり足」になったというわけです。


どの稽古をする時も「和の構え」の回で最初にイメージした、体の縦軸横軸を時々確認するようにしてください。また、目線を真っ直ぐ遠くを見て一定させるのも忘れずに。


最初は床を削るようにしっかりと進みます。慣れてきたら少しずつ早めて、上半身が動かないように何度も稽古してください。運びが早くなってくると重心移動のときに自然に爪先が少し上がります。「すり足」というと、足を出したときにわざと爪先を上げると思っている方がありますが、決して自分から上げるのではありません。結果として必然として上がるのです。
前に進むのが上手く行ったら今度は後ろに同じように動いてみましょう。まずは構えを変えず重心を前の足に乗せたままもう片方の足を引き上げて一足分後ろに置きます。前に行くのと同じように重心を床と平行に後ろの足に移し、もう片方の足も同じようにして後ろに歩きます。慣れたら、上げた時間を床を擦るように重心の移動。それを繰り返します。頭から下がらないで、腰から下がるよう気をつけましょう。
前に進むときも後ろに行くときも重心が前にあることを意識してください。

大事な上半身を動かさないように下半身で運ぶ、だから能では「歩く」と言わず「運ぶ」と言うのだと思います。
余談ですが、階段を上がるときもこの「抜き足差し足」の要領で、上の段に上げた足に重心を乗せるとき、腰で体を持ち上げるようにするとあまり体重を感じないで軽く上がれます。荷物があるときも、両手に分けて持ってこの要領で上ると、スムーズに上れると思います。試してみてください。

能エクササイズでの稽古は、足腰を相当鍛えますが筋肉を緊張させますので、必ず最後に足腰や肩、首などのストレッチを組み合わせています。「使った筋肉はほぐす」これが健康な体を作るためにはとても大事なのです。(ストレッチのすすめ参照)

能エクササイズを体験してみたいという方がありましたら「声の道場・能エクササイズからのお知らせ」に詳細を記載しておりますのでご覧いただきお問い合わせください。

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