喉を開く3

以前から西洋と日本の発声を比べ、和の発声では口を縦に開けず、顎を横に使うという事を述べてきました。
以前のブログ「喉を開く」の回で英語の発声の教え方で、「喉を開くために欠伸をするときのように」と述べてあるのを見つけ、和の発声では「欠伸を噛み殺すようにする」喉の開き方だと気づいたことを述べました。
その後「喉を開く2」では喉を開くため「欠伸を噛み殺す」ようにすると上半身が持ち上げられ、お腹の筋肉が横に張ることに気づいたことを書きました。
それからというもの、謡の稽古では毎回皆さんに「声を出す前に先ず喉を横に開きお腹を感じる」ようにお教えしています。そうすると、あまり説明しなくても、どなたも構えが自然に出来るもいうこともわかってきました。形を外から作らなくても腰が入り、上半身の姿勢が良くなり、お腹にも力が入り、肩の力が抜けるのです。それを長く保つには筋力がついてくることも必要ですが…。

欠伸を噛み殺すように喉を開くと、顎が横に開いたまま背筋に惹きつけられ、そのまま声を出すと「息の中に文字を言い放つ」ことになる。

「この状態が世阿弥のいう。一調二機三声の(機)に繋がるのではないか」
曲の位や役柄をわかったうえで調子(ツヨ吟かヨワ吟か、上か中が下か)を決め、その状態(喉を開いた)で声を発する。
それは「息の中に文字を言い放つ」ことになります。私にとってすごい発見でした。

頭で考えると腰だ腹だ顎だと言ってもどれかを考えるとどれかが抜ける。けれども「喉を開く(欠伸を噛み殺すようにする)」ことだけ意識して声を出せば、間違いなく顎が引き付けられ、腰が入り、腹に力が入り、声が体に響くのです。
もちろんその状態を長く保つ為には相当な筋力が必要です。そのための筋トレは
「いつも喉を開くことを意識して稽古をする」
それ以外にはないので簡単なことではありません。それでも何回か体でいい状態が感じられれば本当の謡に近づくのではないかと思っています。

この頃手首の治療のために通い出した整骨院の若い先生から
「能の構えってどうするのですか?」
と聞かれたので、一応形を説明した後、
「この頃は喉を開くために欠伸を噛み殺すようにするのを教えていて、そうすると構えができるんですよ」
というと、流石に体を扱うプロ、すぐに施術の手を止めご自分でやってみて
「スゲェ!」
と声を上げられました。私もビックリしたのですが、
「こうすると一発で和の構えが体感できますね」
と言われました。
身体のことを研究するために、武道なども習われたことがあるらしいのですが
「和の構えの説明を受けて、概念的にはわかってもなかなか体感として感じることができてなかったのが、今のでわかりました。凄いですね」
それが「スゲェ!」だったのです。
もともと体中の筋肉をしっかり使って研究してる方だからこその一発感だったのだとは思いますが、とても嬉しいことでした。

「喉を開く」から始める稽古は、どなたに対しても、その場で感じていただけ結果が出るので、自分でも「間違いない」と思ってお教えしていました。とはいえ毎日体と向き合っていらっしゃるプロに認めていただいて、あらためてこの教え方に自信が持て、嬉しくなりました。

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