舞囃子を楽しむ

本年10月22日(土)、梅若能楽学院会館にて十年ぶりの「こころみの会」を催すことにいたしました。
今回は私が無謀にも三番舞囃子を舞わせていただくのですが、その他にも間で仕舞や連吟、語り、一調も楽しんでいただき、そこから「五番立の能」を垣間見ていただく、そんな会を試みたいと思っています。

40歳で玄人として能の道を歩み始めた私は、梅若会の公演で多くの能を舞う機会をいただき、また私個人の会「緑桜会能の会」「こころみの会」も主催させていただきました。
「緑桜会能の会」は「自分が舞いたい能」を周りの先生方に助けていただきながら、どうにか六回開催できました。
「こころみの会」は「自分が観たくなる会」をコンセプトにゲストをお招きし、私自身は企画に重きを置きました。おかげさまでお客様に喜んでいただくことができましたが、思うところがあり十回を重ねたところで休会といたしました。

それからいつの間にか10年が経ってしまいました。やりたいこともあり、いろんな経験を積んで充実した期間となり、あっという間でしたが、このところの2年を越すコロナ禍の中での舞台の危機を経て、新たな「こころみの会」への思いが膨らみ始めました。それが「自分にできる表現」を模索する今回の会につながりました。

これまで30年、能楽師としての身体を育てていただいた面や装束の力をお借りせずに「素の自分で表現する舞囃子」を模索していきたいと思うようになったのです。
もともと能楽師になりたいと思った理由の一つに「能を感じさせる仕舞や舞囃子を舞えるようになりたい」ということがありました。
歳を重ねるなかで、それなりに体を鍛えてきたつもりですが、面や装束を付けたときに思い通りに動ける体にはまだまだなれません。そう感じる中で能楽師として残された少ない年月を一番自分に合う行き方にしたいと思うようになったのです。

私の仕舞や舞囃子を観てくださった方に「その能を観てみたい」「こういう稽古をしてみたい」「私にもできるかも」と能を身近に感じていただければ嬉しい、これからはそういう位置に自分を置きたいと思っています。

〜能を想像しよう〜という副題にしております。舞囃子はこれまでの能楽師人生で私の思い入れのある曲、高砂・井筒・山姥の三番を選びました。舞囃子の間の演目も五番立ての能に添った形として存在感のある番組になったと自負しております。特に舞囃子「井筒」の前には山本東次郎先生に能の間狂言での語りをしていただけることになり、舞囃子以上に楽しんでいただけると思っています。
以前のブログ「こころみの会をもう一度」「間狂言」も参照していただけると嬉しいです。
詳しくは緑桜会ホームページ「公演・イベント情報」をご覧ください。

番組が出来上がり、このお知らせをするひと月ほど前からまたコロナが猛威をふるい始めました。会までの間に少しでも収まり、たくさんのお客様ににご来会いただけることを心から願っております。

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